連成問題の例:誘導熱問題

この章では、二つの異なる物理支配方程式系、ここでは、熱伝達系と誘導電流系を組み合わせて解く問題について説明する。

昨今、計算機能力の向上と、ソフトウェアの向上で、今までは個別に解かれていた問題を組み合わせてより複雑な問題に対する解析が行われている。

幾つかの異なる物理現象がそれぞれ非線形的に関係する場合も、GetDPでは反復的に収束するまで計算させる事が出来るが、ここでは、単純なものをなるべく紹介する意図から、相互で無く一方的に関連する問題を説明する。

渦電流が発生する問題を前章で説明したが、渦電流が発生すると抵抗によってジュール熱が発生する。この熱が伝達し、表面から放熱されるような問題を扱おう。 このような問題を扱うとき、準静的磁場方程式の他に、熱伝導方程式を解くことになる。 イメージする対象は、いわゆるIHヒータによって鍋が熱されるモデルとしよう。

 

Gmsh

今回、軸対称の形状が多いので、押し出し(Extrude)を用いた。 ここでは、コイル部分の扱いについて紹介する。

コイルの形状は電線を個別に扱うのでは無く、トロイダル電流がある領域で流れているとする。 そのコイルはチューブ上になっており、その横断面は矩形である。 そこで、まず矩形平面を定義し、それを回転押し出しをすることで、コイル領域を定義していく。 以下にその部分のGEOファイルを示す。

熱伝導方程式(Heat Equation)は、

$$ \rho C_p \frac{\partial T}{\partial t} + \nabla \cdot \kappa \nabla T + \nabla \cdot \vec{P} = Q, \label{eq:heat} \tag{19}$$

で表される。ここで、$T, \rho, C_p, \kappa, Q, \vec{P}$はそれぞれ、温度、質量密度、比熱、熱伝導係数、発熱量、熱流である。

ここで想定するモデルは、IHによって鍋が温められている系である。 空気雰囲気中にある周波数で掃引されているドーナツ状のコイル、そしてその空隙を埋めるようにしてコアがある。 そしてその上に鍋が置いてあるのが今回のモデルである(図1718(a)18(b))。

Figure 17: モデルを下から見上げた様子
 
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