RLSAとは

Radial Line Slot Antennaとは、平面状のアンテナの一種で、スロットアンテナのペアをらせん上や同心円上にに並べて、ボアサイト(鉛直)方向に大きなピークが来るように位相が揃うように設計されたアンテナである。 JAXAが打ち上げた、金星探査飛翔体「あかつき」に搭載されていたことでも有名である。

ここでは、当社で開発しているElectro Magnetica NumericaでこのRLSAを解析した例を紹介する。

RLSAモデル

ここで取り扱うモデルを図1に示す。 スロット数は284個で、ターゲット周波数は32GHzである。

Figure 1: RLSAアンテナ鳥瞰図

2にアンテナの縦断面図を示す。 裏側に給電ポートとして同軸導波管が接続されている。

Figure 2: アンテナの断面図
給電のための同軸導波管がスロットアンテナの背面に接続されている

このアンテナモジュールで重要なのは、遠く離れた地球まで信号を効率よく到達させることなので、特にディレクティビティが重要となる。 このモジュールのディレクティビティは理論値として30.5dBとなるので、これが上限として目安となる。

数値計算

スロットパネルや導波管との接続部、導波管などはCADデータとして存在し、それらをSTLフォーマットでEMに読み込んでいる。 さらに、同軸導波管に信号入力ポートを設定し、32GHzを中心とした適当な帯域幅をもつパルス信号を入力させる。 その信号に対して、無限遠でどのような信号パターンになるかを計算し、放射パターンとして表示させる。

EM1.8ではこのような作業が簡単に行うことが出来、特にメッシュは完全に自動的に作成されるのでユーザの作業は非常に少ない。

3に、シミュレーションの初期に、信号のパルス前面が伝わっていく様子を示した。 このように同軸導波管からアンテナに入射した信号は、アンテナ内部をスロットに向かって同心円状に伝播していく。

Figure 3: 同軸導波管から給電された信号波面がスロットに近づいていく様子。

このシミュレーションを、システム内部のエネルギーが充分に減衰した後に後処理をして得られたディレクティビティを図4に示す。

Figure 4: 32GHzでのディレクティビティ。
理論上は30.5dBでよい精度で計算できていると評価を受けた。

理論値から鑑みるに実際のモジュールとしては妥当な25dBの値を得ており、この分野の権威者からも妥当な値だとの評価を得ている。

 

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